アドバイス集 2章Q04-開発部-

話し合いを深めるために大切にしたいことは何か。

1 「話し合いを深める」ことのできる子どもの育成を目指して

「話し合いを深める」ことができたと、私たちが感じるのはどんなときでしょうか。それは、課題解決のために様々な考えを出し合い、考えを関わり合わせながらよりよい方向を目指すことができたときだと考えます。

では、学級会で「話し合いを深める」ことができるようにするには、どうすればよいでしょうか。司会役や書記などを子どもたちに任せて、教師は見守るだけでは、「話し合いを深める」ことは到底できません。次の二つの段階で、教師が意図的に指導を進めることが、「話し合いを深める」ために、大切であると考えます。

話し合いの前に…全員が課題意識をもって、その解決を目指すことができるようにする

話し合いでは……考えを関わり合わせてよりよい方向を目指すことができるようにする

2 全員が課題意識をもち、その解決を目指すために

学級会では、数多くの考えが出されればよいというわけではありません。出された考えの一つ一つが、課題を解決するためのものであることが大切なのです。そうなるためには、話し合いの前段階から教師が意図的に関わり、子どもたち全員に課題意識をもたせて、その解決を目指して話し合いに臨ませる指導をしていく必要があります。

まずは、どんな議題にするかが重要となります。学級目標に根ざした学級にするために、今まさに課題となっている内容を議題にすることで、全員が課題意識をもつことができるようになります。また「自分たちの学級を自分たちでなんとかしなくては」という切実な思いをもって、より真剣に考えることができるようになります。

議題が決まったら、提案理由や話し合いのめあてを明示することが大切です。提案理由を周知することで「何のために話し合うのか」が明確になり、話し合いのめあてを意識させることで話し合いの方向性が共通理解できます。こうすることによって、話題がそれたり、拡散したりすることなく、解決のための考えを引き出すことができるのです。

3 考えを関わり合わせながら、よりよい方向を目指すために

a. まずは、様々な考えを出し合わせます

話し合いでよりよい方向を目指すことができるようにするには、まずは様々な考えを出し合い、互いになぜそう考えたのかを伝えたり、聞いたりすることで考えを深め、さらに考えを出し合って…ということを繰り返していくことが大切だと考えます。そこで教師は、日頃から、様々な考えが子どもたちから出されるような学級づくりをしていきます。まずは教師自らが、子どもたちのつぶやきや発想を大切にし、子どもたちには、教科指導や学校生活の様々な場面で、「自分の考えをもって伝えること」「互いの考えをよく聞き合うこと」の大切さを説いていきます。

学級会では、議題について一人一人がしっかりと考え、自信をもって意見を述べることができるようにするため、事前に考えをまとめさせた上で臨ませるとよいでしょう。進行役を務める司会には、「他に意見はありませんか」という言葉で、様々な考えを引き出させます。疑問点は質問してそれぞれの考えを理解できるようにさせます。このとき、質問に対して答えるのは、基本的には考えを出した本人ですが、補う点があれば本人以外であっても発言し、互いの理解を深めます。

b. 様々な考えを関わらせることで、よりよい方向を見つけていきます

次は、その様々な考えを関わり合わせていきます。「考えを関わり合わせる」とは、一つ一つの考えのよいところや問題点、他の意見との共通点や相違点をとらえながら、よいところを生かしたり、まとめたりしていくことです。司会には「この意見についてどう思いますか」という言葉で話し合いを進めさせ、反対意見が出たら、それについてどう思うかを話し合っていきます。よいところを生かして一つにまとめたり、不足した部分を補って新たな考えが出た場合も、司会には、「今の意見についてどう思いますか」という言葉で、関連ある考えを引き出させていきます。こうして考えを関わらせていくことで、当初の自分の考えに固執することが少なくなり、みんなでよりよい方向を目指すことができるようになります。話し合いがまとまってきたら、司会には、学級目標や話し合いのめあてに基づくものであるかについて確認をさせ、折り合いをつけながら決定をしていくように促していきます。

4 「話し合いを深める」経験が、子どもたちを成長させます

子どもたちが「話し合いを深める」ことによって課題解決をすることができれば、解決をした内容についてみんなが納得し、「話し合ってよかった」という満足感や「自分たちで決めることができた」という達成感、決定したことを成し遂げようという意欲をもって次の行動につなげることができるようになります。このような経験は、人の考えに耳を傾け、どんな意見や考えも大切にすることのできる子どもを育てます。また、仲間として互いに認め合いながら、自分たちでよりよい学級をつくっていこうとする気持ちをはぐくみ、学級集団としても成長させることができると考えます。

「話し合いを深める」経験を積むことは「いじめ防止」につながります

国立教育政策研究所発行『いじめのない学校づくり』には、いじめの未然防止のために重要な事柄として、「居場所づくり」と「絆づくり」が挙げられています。

「居場所づくり」とは「子どもたちが安心できる、自己存在感や充実感を感じられる場所をつくりだすこと」、「絆づくり」とは「主体的に取り組む共同的な活動を通して、子どもたち自らが絆を感じ取り紡いでいくこと」であると定義されています。

「話し合いを深める」ことは、一人一人が主体的に考え、互いの考えを尊重し合いながら、学級全員でよりよい学級づくりをめざすことです。この経験はまさに、子どもたちが一人一人の存在を大切にしながら(「居場所づくり」)、自分たちで絆を紡ぎ、その深まりを感じさせ(「絆づくり」)、いじめ防止につながると考えます。

子どもたちの健全な心を育成し、いじめを防止するためにも、教師の適切な指導で、子どもたちに「話し合いを深める」経験を積ませることが大切であると考えます。

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2章Q05 実践活動後の指導で、なぜ振り返りを重視するのか。

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